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これ以上話しても、遅かれ早かれ僕に押し付けられるのは変わらないようなので、僕はかなり躊躇いながらも了承した。
どうにも僕はこの子が苦手らしい。ならば一緒にいなければいいだけなのだが、危険なことをすると知っていながら野放しにしておくのはなんとなく無責任な気がする。
もちろん、彼女が可愛らしい容姿をしているのも理由の一つではあるのだが。
人形を預かった翌日、仕事の帰りに買い出しをしていた時、不意に携帯が震えた。誰からだと見れば有希からだった。
また面倒事を持ち込んできたのかと辟易しながら通話ボタンを押すと、切羽詰まった様子の有希が捲し立てた。
「に、人形が! 人形が!」
「人形がどうしたって?」
「人形が私の部屋にあるんですよ!」
まさかと思いながら話を聞いていると、どうにも単純な話ではないらしい。
彼女は昨日夢を見た。怖い夢というよりは不可解な夢。家から帰ってくると誰もいない。どころか生活の気配もない。そんな家に疑問を感じながら部屋に戻るとあの人形が部屋の真ん中に転がっている。不気味に思って人形を拾いあげようとしたら急に視界が変わった。何故か自分が自分を見上げている。
何がどうなったのか、一瞬分からなくなったが、すぐに自分が人形を介して部屋を見ているのだと気付いた。
「夢はそこで終わりました。それに伴ってあの人形が私の部屋にあるということは……」
偶然、ではないだろう。少なからずあの人形が関わっているのは間違いない。
まさか様子を見る暇もなくこんな事態を引き起こすとは。とんでもない代物を見つけてきたものだ。
すぐにそっちに行くと告げて電話を切る。買い物を切り上げてスーパーを出ようとした時だった。
視線を感じる。
辺りを見回すが、誰もが無関心に道を歩いているだけ。こちらを見ようともせず、ただ自分の生活を営んでいるだけだ。そんなありふれた日常が広がっている。
気のせいだろうか、と頭に浮かんできた疑問を払いのけ、僕はすぐに有希の家に向かう。
その間も誰かの視線は背中に刺さったままだった。
部屋に入ると、間髪入れずに昨日のような違和感に襲われた。女の子らしい部屋なのに物悲しい、殺伐とした雰囲気が漂っている。
「どういうことでしょうか」
あの人形に纏わる話を聞く限りでは、すでにその契機が訪れたと考えていいだろう。
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