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「昨日見た夢もその一部じゃないか?」
僕の見解を述べると、有希が怯えたように僕のシャツを掴む。
「私、これからどうなるんですか?」
「不可解な死を遂げるんじゃないか? 夢の内容から察するに、人形と同化、あるいは入れ替わるか」
どちらにせよ彼女という存在が失われるのは間違いない。
「なんとかしてください! このまま死んだらとんでもない悪霊になって呪いますよ!」
「とは言ってもなぁ。僕はお払いとかできないし」
そんな問答を何度か繰り返し、僕はやれやれと首を振る。仕方ないだろう。状況が状況だ。
この家に向かっている途中から感じていた視線は、部屋に入ってからより近くに感じられる。というより、目の前にいる何かから向けられているのだ。放っておけば僕にも被害が及びかねない。
「確かこの近くにかなり有名な心霊スポットがあったよね」
「ありますけど……」
「捨てちゃおうか。これ。効果あるかは分からないけど」
そして僕らはこの一帯ではかなり有名な、いわゆる出るという場所へそれを捨てにいった。
こういう危険なものは危険な場所に置いてくるに限る。目には目を、お化けにはお化けをってこと。
しかし、それを捨てに行く道中にも色々と恐ろしい目に合ったのだが、それはまた別の機会に話そう。
人形を出るという噂の井戸に捨てた瞬間、ずっと感じていた視線と吐き気は糸が切れたようになりを潜めた。
帰る途中の車で、有希がボソッと呟く。
「それにしてもあれは反則ですよ。実体のない幽霊ならまだしも、質量を持った物体がいつの間にか移動するなんて……」
「曰くのあるものなんてそんなもんだろうよ。これに懲りたらオカルトから手を洗うこった」
「あ、ところであの廃神社にはいつ突撃しますか?」
どうやらこの娘は一度死ぬような恐ろしい目に合わなければ分からないらしい。
これは完全に補足だが、それから例の心霊スポットに新しい噂がプラスされた。
『夜に井戸の中を覗くと人形と入れ替わる』
真相は分からないが、あの場所に行くのは絶対にやめようと僕は思った。
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