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1人だったリビングに響いた、俺以外の声。
そっと振り向けば片手に買い物袋を下げて、泣いている俺を不思議そうに見つめるジェジュンヒョンがいた。
「どーしたのさ、1人で。ユノは?」
キッチンに行き よいっしょ なんて言いながらドンッと豪快に買い物袋を置く。
「知らねぇ……」
「知らないことはないでしょ、デートデート言ってたくせに」
「俺1人で舞い上がってたんだよ。ヒョンはこれっぽっちも楽しみになんてしてなかったんだから」
「ドタキャンされたってわけか……」
ソファにうずくまってコクリと頷いた。
キッチンの方からカサカサと袋を漁る音がする。
「朝になって、急用が入った、って…」
「だったら仕方ないじゃん?」
「そうだけど…」
やっぱり、どんな理由でも嫌だよ。
せっかくのオフをヒョンと過ごせないなんて。
近くにあったクッションを手にとってすぐ投げたら、テービルの上にあるリモコンスタンドに当たって、結構大きめな音を立てて倒れた。
「あーもうなにしてんの」
「ユノ、俺のこと嫌っちゃったかな……」
遠くで、やかんの噴く音がした。それが止まったと同時にインスタントコーヒーの蓋を開ける音がする。
「ブラックでいい?」
「うん……」
しばらくすれば、コーヒー独特の香りが部屋に充満した。
コーヒーらしい苦さと、その中にある甘味を帯びた匂い。
それが、何故かユノヒョンを思い出させて胸が痛かった。
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