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「ユノに限ってそんなことはないでしょ」
両手にカップを持ちながら言った。その片方が俺の前に差し出される。それを受け取り、両手で包み込む。少し熱いくらいの熱が俺の手に伝わった。
「そんなの、わかんないじゃん…」
「いーや、ありえないね」
「人間の気持ちなんて曖昧じゃん」
「ユノのユチョンに対する気持ちはそんなに甘いもんじゃないでしょ」
俺に対する、気持ち?
考えたこともなかった。俺は、ヒョンに嫌われないように、って必死で相手のことなんて考える余裕なかったから。
「俺に、対する…気持ち…」
「そう。もしユノが、軽い気持ちでユチョンと付き合ってるんだったら、2人はとっくに終わってる」
「男同士の恋愛はね、命がけなんだよ」
「常に世間の目を気にしてなきゃいけない。それに、誰にも知られちゃいけない。たとえ家族にさえもね」
「告白して、付き合って、好きなだけキスして、セックスして。ほかに好きな人が出来たから別れてください。はいそーですか。なんて話で終われるレベルじゃない」
「それはきっと、ユチョンもよくわかってるでしょ?」
わかってる。
どれだけ危ないかってことくらい。
だからこそ、小さなことで不安になったり、苛々したり、素直になれなかったりする。
いずれは必ず、別れがやってくるって、わかってるから。
結局は、恐れてるんだ。
“最後”を。
それに恐れて、素直になれない自分が憎い。
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