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おいおい。
「何か用があって声かけたんでしょ?」
と言えば、翠は行方を振り返り、にぱっと笑う。
「ゆっくん、何だっけ?」
行方はヤレヤレ、といった感じで、おもむろに私の胸の辺りを指差した。
「それ」
それって何よ!
どうせ無いわよ、悪かったわね、失礼な!
斬ってやろうかと思った瞬間、
「あー!そうそう、あのね!」
翠が叫んだ。
「何なの……」
「アイラちゃんがいつも持ってる写真の黒髪の女の人、誰かなぁと思ったの」
行方が指差したのは、私が抱えていた手帳だった。
翠の言う写真は、いつもこの手帳に挟まっていた。
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