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「藤堂君」、「タク」
葛西さんや涼子が悲しい表情でオレの名を呼んでいた
(歩…)
まるで魂の抜けがらの様な姿をしていた歩は足元はふらついていたがオレの横を通り過ぎようとする
「歩っ!」
歩を呼び止め、歩はオレとなかなか視線を合わせようとはしない
「今回の一件で、黒幕(フィクサー)が動き出す。そうなると直接被害を受けるのはお前だ
「だから…」
「戻って来いって?言い出すのか?お前が!!この下らない闘いにまた僕を巻き込むって言うのか!
タク!!!」
(お前、そこまでオレを…)
「ちょっと、歩。あんたね…」
オレや歩の会話に涼子が入ろうとしたが空いている片手を涼子にむけて彼女を止める
「タク…分かったなら。その手を離してくれないか?
僕は君の所に戻るつもりも無いし黒幕が誰であろうと関係ない…
相手になってやるよ
そして、一人で誰かを守れる位の男になってみせる。もう、目の前で誰かを…大切な人を失うなんて
僕はもう、嫌だよタク」
「歩…」
歩は足を引きずりながら一人、教室を出て行った
「進藤君っ!!!」
すると、葛西 綾が彼の後を追いかけるように教室を出ようとするが腕を掴み止めさせる
「嫌、離しっ…てよ!」
「一人にさせてやれ…」
「でも、彼は私のせいで怪我を」
彼女が最後に何を言い出すかは分かったが彼女の為、そして歩の為に怒鳴る
「良いか。良く聞けよ転校生…
その中途半端な優しさがな時には人を苦しめる事だってあるんだよ
分かったなら、今の言葉。しっかりと胸に刻みな。今後、お前の人生を大きく左右する事になる…」
「はっ?何それ、脅し?」
「嫌、これは警告だ。葛西 綾…
余り深入りはしないことだ
自分の為に…な」
彼女に背を向けてオレもその場から立ち去った。
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