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ここ『異精神科学研究病院』は人間の精神に異常が発生し、それが『異常』レベルと認められた人間が通う病院だ。
そんな病院の一室、715号室に、重井鉱輝と重井眞梨はいた。
「調子はどうだ?眞梨」
「うん……今は落ち着いてるよ」
そうか、と鉱輝は安心した顔をして、手元のりんごの皮を手慣れた手つきで剥いていく。
落ち着いていると言っても、数種類の薬を飲み、発作を強制的に抑えているだけだ。
眞梨の体の弱さは全く治っていない。
が、ここの病院で一人友達が出来たらしい。
眞梨が言う友達の名前は鍵城とか言うらしいが、詳しくは知らないし顔も知らない。
「食うか、りんご」
眞梨は無言で頷き、皿にある梨りんごを掴み、口に運ぶ。
しゃり、というみずみずしいりんごをかじる音が響く。
「……おいしい」
満面の笑みを浮かべ、眞梨はそう言った。
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