9 お里沙の恋

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ふたりがかりの説得に、里沙ちゃんはうつむいてくちびるを噛みしめている。 「わたくしは…わたくしは…側室になるのはイヤでございます!」 よしっ、よく言った! 「このような気持ちは生まれて初めてなのでございます。 朝、目が覚めて『ああ、もしかすると今日はあのお方のお顔を拝見できるかもしれない』と思っただけで、一日が楽しみで仕方がないのです。朝の光がいとおしく思えるのです」 ポロポロと涙をこぼしながら、里沙ちゃんは続ける。 「わたくしは、景弘さまをお慕い申しているのですから…!」 しん、と静まりかえった部屋に、里沙ちゃんの嗚咽だけが響く。 志乃ちゃんは困り果てた顔でうつむき、結衣ちゃんはもらい泣き。 そして、お梅は…。 「この部屋の主(あるじ)が、手の着けようがない馬鹿者だということは存じておったが、なんと部屋子が一番の大馬鹿者であったか。せっかくの機会を棒に振るなど、考えられぬことじゃ。好きにするがよい。…あとのことは、わたくしが何とかするゆえ…」
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