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「よかった、楽しかったのはあたしだけじゃなくて」
「お蘭さま、“楽しかった”などと、まるでもう終わったことのようにおっしゃるのはおやめくださいませ」
隣のお布団で、結衣ちゃんが抗議する。
「そうですよ、わたくしどもはこれからもずっと、お側においていただくつもりなのですから」
「里沙ちゃーん、ずっとここにいるつもりなのぉ? 奥勤めは適当なところで辞めちゃって、景弘くんのお嫁さんになるんじゃなかったっけ?」
「まっ、お蘭さまったら、おからかいにならないでくださいっ」
「それに結衣ちゃんは、御目見得以上の御右筆になるんだよね」
「いつかはそうなればよいと願ごうておりますが、わたしごときがなれますでしょうか…」
明るくて、ちょっとだけお調子者の、里沙ちゃん。
しっかり者のくせに、自分に自信がない、結衣ちゃん。
真っ暗ななかで声だけを聞いていると、顔を合わせているときよりもふたりのキャラがはっきりと浮かび上がってくる。
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