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「はい…幸い、御み足を挫かれただけで、大事には至りませんでした。しかし…ああ、すべてわたしが悪いのでございます…わたしが、わたしがしっかりとお支えしていれば…ああああ」
「ちょっとお玉ちゃん、泣いてちゃわかないでしょ。いったいどうしたのよっ」
涙をボロボロこぼしながら泣き崩れるお玉ちゃんの肩を揺する。
「…昨夜は、お万さまのお具合がことのほかすぐれず、いつもより早めに床につかれました…」
部屋子たちもこれ幸いと早々に自分たちの部屋に引き上げ、お玉ちゃんだけが隣の部屋で針仕事をしていたらしい。
すると、眠ったはずのお万の部屋からカタカタと物音がしたかと思うと、悲鳴が聞こえた。
「物の怪が出たって言うの!?」
「はい。実はこのところ頻繁に物の怪がお万さまを悩ませていて、昨夜お具合が悪かったのも、悪阻というよりも気の病ではないかと」
その後も、何度か怪異があり、お玉ちゃんは隣の部屋で寝ずの番を続けていた。
「するとお万さまがわたしをお呼びになったのです。お手水に行きたいから介添えを、と」
なにしろお万は悪阻でたいしたものを食べておらず、しかも物の怪騒ぎで寝不足。
ついうっかりよろけて転んでしまったというのだ。
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