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「お楽さまのところへも、物の怪はやって来ますか?」
「いえ、今のところはまだ」
「そうですか…」
「でも。あたしは明日…っていうか、もう今日ですね、とにかく上様の御寝所に召されることになっています。だから、きっと物の怪はやって来る。そこであたしは物の怪をやっつけようと思っています」
「怖くはないのですか?」
「どうでしょう。やっぱりちょっとは怖いかな。でも、それができるのはきっと、あたしだけだと思うから」
「わかりました。お楽さまならおできになる気がいたします。…物の怪退治を」
すっとお万は視線をあげ、あたしの目を見つめた。
「頼みますよ、お楽さま」
いつの間にかうっすらと外が明るくなっていて、長い長い“対決前夜”が、ようやく明けようとしていた。
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