11 物の怪の正体

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「う、上様、どうしましょう…?」 「この際、そうするしかないであろう」 あーん、ついにあたしたちが結ばれるのが“この際”ってのは、どーゆーことなのよーーーーーっ! 物の怪のバカッ!! 上様の手があたしの帯に触れた、そのとき。 障子がカタカタと鳴り、ロウソクの明かりがふわりと揺れて消えた。 「…来たか」 暗闇に包まれると、隣の部屋に灯されている明かりを受けた障子に、女のシルエットが映し出された。 ざんばらの長い髪。足もとは闇に溶けてさだかでない。 『無念じゃ…ああ、うらめしい…』 地の底からわき出るような、おどろおどろしい声。 「出たわね、物の怪。あんた、いったい誰なのよっ」 思いっきり怒鳴ったはずの声が、微妙にかすれているのが悔しい。 くっそー、ビビるんじゃないよ、あたしっっ! すると物の怪は闇を震わせるように笑い、 『そのようなことはどうでもよろしいではございませぬか…わたくしはただ、上様のお側にいるおなごが憎いだけ…』 と、あたしを指差す。
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