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「う、上様、どうしましょう…?」
「この際、そうするしかないであろう」
あーん、ついにあたしたちが結ばれるのが“この際”ってのは、どーゆーことなのよーーーーーっ!
物の怪のバカッ!!
上様の手があたしの帯に触れた、そのとき。
障子がカタカタと鳴り、ロウソクの明かりがふわりと揺れて消えた。
「…来たか」
暗闇に包まれると、隣の部屋に灯されている明かりを受けた障子に、女のシルエットが映し出された。
ざんばらの長い髪。足もとは闇に溶けてさだかでない。
『無念じゃ…ああ、うらめしい…』
地の底からわき出るような、おどろおどろしい声。
「出たわね、物の怪。あんた、いったい誰なのよっ」
思いっきり怒鳴ったはずの声が、微妙にかすれているのが悔しい。
くっそー、ビビるんじゃないよ、あたしっっ!
すると物の怪は闇を震わせるように笑い、
『そのようなことはどうでもよろしいではございませぬか…わたくしはただ、上様のお側にいるおなごが憎いだけ…』
と、あたしを指差す。
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