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そう、今ならわかる。
この子は言ってたじゃない、『おなごが出世できるのは大奥だけですから』って。
出世のマックスは、もちろん将軍の母親。
その野望を邪魔する者を排除するために、この子はありとあらゆる手段を使ってきたんだ。
物の怪を出してお万と上様を御寝所から遠ざけ、新たにやってきた側室を脅かし…そして、懐妊したお万を転ばせ…。
「でもね、お玉ちゃん。お万さまのことはやり過ぎだったよね。もしもあのとき、生まれてくるはずの赤ちゃんが流れていたら、あんたは殺人者よ」
下を向いて唇を噛みしめる、お玉。
「どういうことじゃ、お蘭! この者がお万の方になにかしたのか?」
「ああ、お梅は知らなかったんだっけ。昨日の夜中、お万が部屋で転んでケガをしたの。厠に行こうとしたとき、介添えしていたお玉ちゃんの着物の裾に足を取られて」
「ではこの者はわざと転ばせて、赤子を亡きものにしようと…? それはいかぬ! このわたくしでも、そのようなことまでは考えてみたこともないのに。なんと恐ろしいおなごじゃ」
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