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「だ、旦那さまっ!?」
「福っ!?」
あり得ない登場人物に、腰を抜かしそうになる、あたしと上様。
あたしたちの反応を楽しむように春日局はゆっくりと足を運び、お玉を見下ろす。
その姿は威厳に充ち満ちていて、背中を丸めて意味不明のことを口走っていた老婆とは思えない。
しかも、その春日局を介添えしている人物を見て、二度びっくり。
今朝がた足をくじいて休んでいるはずのお万じゃないのよ!
「お万、そなたの読みが当たったな。懐妊したふりをすれば、必ずやお玉はしっぽを出すであろう、という」
「いえいえ、元はといえばお局さまが耄碌(もうろく)されたふりをなさったからこそ」
懐妊したふり?
耄碌したふり?
いったい、何がどうなってんのっ!?
「ほほほ、お蘭、ずいぶんと驚いておるな。わたくしの芝居も、なかなかのものであったろう」
な、なによその勝ち誇ったような笑いはーーーっ。
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