11 物の怪の正体

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「だ、旦那さまっ!?」 「福っ!?」 あり得ない登場人物に、腰を抜かしそうになる、あたしと上様。 あたしたちの反応を楽しむように春日局はゆっくりと足を運び、お玉を見下ろす。 その姿は威厳に充ち満ちていて、背中を丸めて意味不明のことを口走っていた老婆とは思えない。 しかも、その春日局を介添えしている人物を見て、二度びっくり。 今朝がた足をくじいて休んでいるはずのお万じゃないのよ! 「お万、そなたの読みが当たったな。懐妊したふりをすれば、必ずやお玉はしっぽを出すであろう、という」 「いえいえ、元はといえばお局さまが耄碌(もうろく)されたふりをなさったからこそ」 懐妊したふり?  耄碌したふり? いったい、何がどうなってんのっ!? 「ほほほ、お蘭、ずいぶんと驚いておるな。わたくしの芝居も、なかなかのものであったろう」 な、なによその勝ち誇ったような笑いはーーーっ。
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