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｢旦那さま…もしかして､ずっと正気だったの!?｣
｢当然じゃ｡歳をとってもこの春日､お頭(つむり)はいささかも衰えてはおらぬ｡このお万が､どうにもお玉があやしいというので､呆けたふりをして様子をうかがっておっただけじゃ｣
｢ええええええーーーーっ!?｣
｢まさかそなたが舞い戻ってくるとは思いもしなかったがな｡のう､お万?｣
｢さようでございますね｡お蘭どの､よかれと思ってしたこととはいえ､だましたことは申し訳なく思っております｣
いや､お万に頭を下げられても､あたしはどうすりゃいいのか…｡
｢じゃ､あれもこれも､全部お芝居だったっていうんですか? あ､そうだ! 上様はっ? 上様も全部知ってたの?｣
だとしたらあたし､人間不信よ､まったくもう｡
｢いや､わしもお蘭と同じく何も知らなかった｡福､お万､そなたたちあまりにも人が悪いぞ｣
すると春日局とお万は顔を見合わせ､
｢敵を欺くには､まず味方から! ことに上様はすぐに顔にでてしまわれるゆえ､まことのことを教えてさし上げるわけにはいかなかったのでございますよ｣
と､うなずきあう｡
｢さぁ､上様｡これからこのお玉を詮議せねばなりませぬ｡上様には見苦しい様をお目にかけたくはございませぬゆえ､万事この春日にお任せになって､お休みくださいませ｣
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