2人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの…大丈夫ですか?」
倒れた彼を数名と抱き起こし、その後一人で彼の腕を肩にかけ保健室までの廊下を歩いてきた。
その途中なんだけど…山内くんからは苦しそうな呻き声が聞こえてくる。
「ぅ……ッく」
「ひぃっ!!」
かけているメガネがずれた。
いきなりギュッと抱きつかれおもわず私は小さく悲鳴をあげてしまった。
「や…山内くぅん……」
「わり…ちょ、タンマ…」
「えっ、え!?」
抱き抱えられたままずるずると床に座り込み苦しそうに短くハッハッと息をしている。
どうしよう、これって誰か先生をつれてきた方が…
そう思って山内くんの腕をおろして立ち上がろうとしたものの手をつかまれ、そうすることは叶わなかった。
「待って、咲山…」
「なっ!ななななんでしょうか!!?」
「一緒にいて、頼む」
「あ…え、でも…山内くん苦しそうだし、その…っていうか山内くん私の名前知ってるの?」
私は小さい頃から影が薄く、クラスでも特に目立つこともなかったためクラスの人には名前を覚えてもらえないことが多いのだ。
「ふ…なに言ってんの、おんなじクラスじゃん。咲山、咲山ゆき」
「そりゃそうだけど…なんか嬉しい。ありがと」
彼が笑う。そんな優しい笑みにつられてわたしも自然と笑顔になった。
「咲山ってそんな風に笑うんだ、可愛いじゃん」
「っ…!!」
顔に熱が集中するのを感じた。きっと今の私の顔は真っ赤なんだろうな。そんなことを考えているとスッと彼が手を伸ばしてきて私の頬に触れた。
「真っ赤だよ?大丈夫か」
「だっ……!!大丈夫…だから……」
私はその手をそっと退けて恥ずかしさから真っ赤になった顔を彼から背けてはたと気付いた。
「山内くん、具合は…?」
「あ、そーいや良くなってるわ。さんきゅー!!咲山」
にぱっと屈託のない学年1のモテ男の笑顔が私に、私だけのために向けられている。
そう考えただけでやっと落ち着いた頬がまた火照ってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!