RE:SET

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 その時、コンコンッと乾いた音が部屋に響いた。  これも日課となっているのだろう。姿を見ずとも、その人物が誰だかわかっている。 「……どうぞ」  そういう風な感じを思わせる素振りでアラトはノックに答えた。  スライド式の白い扉が開かれ、現れたのはやはり予想通りの人物だった。 「やあ、アラト君。お加減はどうだい?」 「特にいつもと変わりませんよ、おじさん」 「そうか。それはよかった」  おじさん――高坂恭平はよくアラトのお見舞いに来ている。  おじさんと呼ばれているため中年を連想しがちだが、彼はそこまで年を食っているわけではない。  年は三十後半で、過去に鍛えていたのか引き締まった体つきをしている。  それでいて身長も高く、まさに“格好いい大人の男性”に見える。  お婆ちゃん格の女性からは絶賛されているとのこと。  仕事帰りなのかスーツ姿で今日は来ていた。  いつもなら私服でラフな格好をしているイメージが強いために新鮮に感じることができる。  しかし、これは“いつもとは違う”ということを意味し、“何か違うこと”が起こるかもしれない。  そういう風にも考えられないだろうか。 「実は……今日は君に渡したいものが見つかってね」  いつも通りなら他愛もない会話をして、花瓶の花を取り替えると帰ってしまう恭平だったが、今日はやはりいつもとは違ってそんなことを口にした。  渡したいもの?とアラトは首をかしげつつ尋ねる。
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