プロローグ

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 カレンダーを見てみる。  5月31日。明日で6月。  ふと、笑みが浮かぶ。 「春ー!起きろー!遅刻してしまうぞー!」 「ちゃんと起きてるよー!」  大きな声に、大きな声で返す。  いつもの朝の出来事。 「今日も彼の家に行くんだろう?なら早くしないと!」 「わかってるよ!」  やはり人の親はいつになっても変わらない。  そんなことを思って、笑いながら少女は階段をかけ降りた。  リビングに出てみると、父親の作った朝食のいい香りが鼻腔をくるぐる。  しかし、時間がないので皿に用意してあったトーストに手早くイチゴジャムを塗ると、 「ひっへひはーふ!」  それをくわえて家を飛び出した。  後ろで父親の怒号が聞こえるが、無視を決め込んで家の門を開けて再び走る。  ――が、すぐに足は止まった。 「なんだ?また今日も寝坊か春?」
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