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「新斗くーん!待ってよー!」
「ん?ああ、春風か……」
放課後。授業が終わり、帰り支度をして教室を出るとすぐに後ろから声をかけられる。
それは言わずもがな、幼馴染みの女の子、春風だ。
「どうだ?新しい友達はできそう?」
「んー、難しいかもしれない……」
高校二年になり、クラス替えが行われた。
新斗と春風はまたしても同じクラスで、その事実は二人をよく知る者を驚かせた。
そして、今の新斗の質問は春風が昔から人付き合いが苦手なために、クラスが変わった日である今日が終わり、心配して自然と出てきた言葉だった。
しかし、また今年もダメそうだ。
「ずっと俺と一緒にいるからじゃないのか?」
「ええっ!?そんなことないよぅ!新斗君は全然悪くない!」
そう。人前にも関わらず春風は新斗と常に共にいる。
そのためかあまり春風に人が近づかないのだ。それが原因なのかは定かではないが。
「いい加減俺から離れて自立しろって。一人じゃなにもできなくなるぞ?」
「むー、そんなことないもん」
新斗の言葉で春風はむくれる。
しかし、彼女はすぐに新斗に笑顔を向けた。
「だって一人になることなんてないもん」
「は?そんなことあるわけないだろ」
「だって新斗君がずっと一緒にいてくれるもんっ」
「ぶっ!おまっ、そういうこと平然と言うなよ……」
「えへへぇ……。でも、いいでしょ?」
「……まあ、考えとく」
それはある春の記憶。 彼女がいなくなる、前の話。
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