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「ウブだねぇ」
「ウブだなぁ」
彼らの友達の二人は言葉をハモらせ、二人して肩をすくめた。
***
――――キーンコーンカーンコーン……――。
「……やっぱり今のままは――」
放課後の鐘が鳴り、ホームルームで少女は握りこぶしを作りながら決意する。
この後のことを。
「春、帰ろう」
「うん」
昼間のことなど当に忘れた二人は、いつものように並んで下校する。
そう。何もかもいつも通り。日常の一場面にすぎない。
「じゃあ、春。また明日」
「うん。また明日」
「今度は寝坊するなよ?」
「わかってるよー」
そう言葉を交わすと、少年は踵を返して歩き出そうとする。
「あ、新斗君……」
「ん?」
少女の消え入りそうな声に少年は振り返った。
「どうした?」
「ぁ……」
ところが、少年の顔を見た途端に俯いて口をつぐんでしまう。
一拍おいて、少女は笑顔を作ると、
「や、やっぱりなんでもない!」
と、誤魔化すように言った。
当然少年の方も不思議に思い、首を傾げる。
「そうか? 何かあるなら何でも言えよ?」
「ううん!大丈夫! また明日ね!」
「あっ、おい春――」
少女は少年の言葉に振り返らずに一目散に家のなかに逃げ込んだ。
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