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「どうだっていいだろ! ほら、せっかくいつもより早いんだから学校行くぞ!」
「あっ、待ってよー!」
その時、少女は彼の背中を見て、ふと嫌な予感を感じた。
何故だか、彼が目の前からいなくなってしまうような、そんな感覚。
そして、少年の足は青信号が点滅する交差点に踏み込む。
「……新斗君!」
回りが見えていなかったのか。
これはどんな悪夢なのか。
――彼の横から大型トラックがもうスピードで向かってきていた。
「――――っ!?」
そこでようやく少年は気づいたがもう遅い。
「いやああああ!!」
そんな中、少女は必死に願った。
――――新斗君を助けて――
***
気がついたら、目の前に春の姿があった。
彼女の前を歩いていたハズなのに、今は春が前にいる。
彼女は横断歩道の真ん中にいて。
――トラックがすぐ脇まで迫っていた。
何故か、その瞬間が果てしなく遅く感じる。
永遠にも感じるその時間の中……。
春は満面の笑みを“彼”に向けていた。
体は自然と動いていた。
彼女を死なせはしないと、その一心で。
しかし、急に足から力が抜ける。
春に目をやると、彼女は弱々しい笑みを浮かべて口を動かした。
そこから読み取れたのは――
――――ダイスキ。
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