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今日こそは好きだと伝えるんだ、と夏の日の帰り道に僕は自分の心に誓った。
相手は小さい時からずっと一緒だった幼なじみの彼女。好きになった理由はたくさんありすぎてもう忘れてしまったけれど、大好きな彼女。
最初に好きになった理由は覚えていないけれど、一緒にいればいるだけ彼女を好きになっていった。
僕が告白を決心した理由はとても簡単だった。高校三年生になり、あと半年もすればお互い卒業してしまう。
彼女と離れるのはとてつもなく嫌だった、ただそれだけだった。
彼女のバイト先のハンバーガーショップの前に着くと、一度深呼吸をしてから、夏の暑さを振り切るように店内へ足を踏み入れる。店内に入ると、一際笑顔を振り撒いている女性がいた。
彼女の流れ落ちる漆(うるし)の滝のように美しい黒髪と、大きな黒真珠のような両眼、美しく整った薄い桜色の唇は、言葉では言い表せないほどの美しさだった。日本人形の如く、腰まであるそのしなやかな漆黒の髪には、少したりとも傷んだ様子は見られない。
彼女の振り撒くその笑顔は、まるでそれが伝染しているかのように周囲の人間を笑顔にしていた。
店内に入っても彼女が僕に気付いた様子は無かった、けれど無理も無いだろう。なぜなら彼女の応対しているカウンターだけ数人の人が並んで列を作っているからだ。
僕もその列に並びつつ横目で店内を確認すると自分と同じ学校の制服の生徒グループを見つけ、気恥ずかしいような気持ちになったが、それでも告白しようという気持ちは揺らがなかった。
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