《一》呼ばれても困りますっ

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 結局、真珠は授業が終わるまで、廊下に立たされたままだった。 「香椎、放課後に科学室まで来い。説教だ」  憮然とした琥珀の表情に対して、真珠は廊下に立たされていたのも忘れ、瞳を輝かせる。 「え? それってお誘い(デート)?」  真珠は胸の前で手を合わせ、期待をこめて琥珀を見上げた。 「んなわけあるか、馬鹿者がっ!」  ごつんっ、と音がするほど頭を叩かれた。  しかし、真珠はなぜか幸せそうな笑みを浮かべた。 「琥珀がくれるものは、例え痛みでもあたしには宝物……!」  琥珀は真珠の発言に呆れ、ため息を吐くとめんどくさそうに手を振り、教室に戻るように指示を出した。 「貝守センセ、ごきげんよう」  真珠はくすくすと笑いながら、教室へと戻った。  相変わらずのマイペースっぷりに琥珀はただ、大きくため息を吐き出した。 ┿─────────────┿  真珠が教室に戻ると、興味津々な表情をしたクラスメイトが数人、近寄ってきた。  真珠はずっと気になっていた髪の毛を直したくて、席に戻りながら髪ゴムを外した。 「ね、香椎さん」  席にたどり着き、カバンからブラシを取り出して手洗いに行こうとしたところ、呼び止められた。 「貝守先生とは、どういう関係なの?」  じとっと湿っぽい視線を向けられ、真珠は数度、瞬いた。 「科学のセンセでしょ?」  真珠のずれた答えに苛立ちを覚えた女生徒はさらに質問を重ねようとしたが、真珠は時計を見やり、慌てる。  次は口うるさい教師だ。  髪の毛をこのままにしておけば、また廊下行きだ。  二時間連続、廊下に立たされるのは勘弁してほしい。  真珠を引き止める声を無視して、手洗いに駆け込む。
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