一章

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米山が、ポンプで水を吸い上げてから、スプーンにたらした。 質のよいシャブは直ぐに溶ける。 米山が、針をはずしたポンプで、スプーンに垂らした水を、吸ったり出したりを繰り返すと、スプーンの中の水は、油のようにギトギトとしたものに変わった。 これは、シャブの分量が多い証拠である。 米山が、再びポンプに針をつけ 「先にやるぞ」 と云ってから、自分の左腕の静脈に針を突き刺した。 一度引くと、ポンプの中に血液が流れ込んだ。 血管に刺さった証拠である。 米山が、ゆっくりと、そして慎重に、右手だけを使いシャブを血管に送り込む。 背中に冷たいものがサッと走る。 米山の顔がやや青ざめてくる。 血管に直接なので、回りが早いのだ。 血管が焼ける様に熱いのも、シャブが濃い証拠なのだ。 米山がポンプを抜くと白木に手渡す。 白木は素早く、コップの水を使い、ポンプを綺麗に洗った。 他人の血液が身体に入るのは好ましくない。 寒気が走るし、血液に、病気の元になるものが入っていたら大変だからだ。 最近で云えば、エイズや肝炎がそうである。 しかし、水でいくら洗っても、大した変わりはないのだ。 やはり熱で消毒しなければ、菌は死なない。 だが、あまりそこまでやる者はいなかった。
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