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この高校には部室棟と呼ばれる、なんのことは無いプレハブが立ち並んでるだけの場所があって。
その-十数件以上が立ち並ぶ-ウチの、本当の端っこ、
陽も差さないんじゃないか?と云うのは些か大袈裟としても、
それぐらい薄暗い隅の隅のプレハブ、
そこから物語は始まる。
『B@seball m@ster』
さて、その『追いやられた感』漂うプレハブの中では。
二人の少女が、
ポーカーをしていた。
一人は、おかっぱのようでそうでも無く裾が外ハネした髪型で二カ所、こめかみの上辺りに赤いリボンをした少女。
もう一人は、少年のようにざんばら無造作に短くされたショートカットで真っ黒な…濡れるような黒髪、と表現出来る程綺麗な髪色の少女。
赤リボンが、天海春香。
黒髪が、菊地真。
二人は、高校二年生でクラスメートで、
同じく女子野球部員だった。
つまりこのプレハブこそが女子野球部の部室なのだ。
「…んー、いい調子いい調子…一枚交換で…はいOK」
赤リボン-天海春香-がそう言って、自らの手札五枚を場に伏せる。
「えー…強そうだな…」
自分の手札と、伏せられた春香の手札、そして春香の顔を代わる代わる見ながら迷う黒髪-菊地真-。
何故、女子野球部員たる彼女らが。
かりにも女子野球部室たるこの場所で。
ポーカーをしているのかと云えば。
ひとえに。
部員が二人しか居ないコトに起因する。
つまり、女子野球部は
天海春香と菊地真の二人しか居ない…そういうコトなのだ。
練習をしようにも、ろくな設備がある訳でもなく。
キャッチボールがせいぜいの人数。
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