プロローグ

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※※※※※※※※※※ 「……………」 ひたすら、ボールの打ち出される機械音と。 それを打ち返すバットの音。 幾つか並んで用意されたボックスの殆どが空の、あまり繁盛していないバッティングセンターで。 「………………」 無言で、ボールを打ち返し続ける一人の少女が居た。 同年代の中では長身の部類だろう…その少女-四条貴音-は。 無造作に後ろで纏めた、すみれ色の髪を一球打つごとに払らう… 「………………っ」 何かを振り切ろうとするかのように。 昔から、野球が好きだった。 ただ、良家の子女として生まれ『姫』として育てられた彼女-貴音-にとって。 幾ら好きでも、おおっぴらに…やらせては貰えないもの。 それが野球だった。 だから、 少しでも時間があれば野球の試合(プロアマ関係なく)を観戦し、 少しでも時間があれば こうやってバッティングセンターで汗を流す。 もちろん、両親がそれに対して良い顔する筈もないのだが。 「……………っ!!」 もう何セット目になるのか、忘れてしまっていたが…その最後の一球を快音と共に弾き返し。 荒い息を吐き出す貴音。 そして疲労感と…えもいわれぬ充足感に片膝をつく。 (…やはり、私は) 「私は野球が好き、ですか?」 そう、ちょうど心を読んだように…貴音の背に投げかけられた言葉。 驚いて振り向く貴音の目に映ったのは、 金網越しに微笑む… 少し跳ね上がった三つ編みの、眼鏡の少女だった。 「好きなことを、好きなだけしたいと思いませんか?四条貴音さん」
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