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「そうだったですかぁ。じゃあ僕が嫌いでお話してくれなかったんじゃないんでっすねぇ」
今度はまた目を細くして笑顔になった。
変な人……
『失礼します。』
私は携帯を見せ、家に帰ろうと彼に背中を向けた。
「あっ!ちょっとぉ。待ってくださいよぉ!」
歩き出した私に、彼は急いで追い付こうとする。
もう一度私は立ち止まり、彼の方を見た。
「お友達になってくっださい!」
彼の真剣な瞳にドキッとしたが、少し変わった人だと思った。
とりあえず返事をしておいた。
顔を縦に少しだけ傾けた。
「いま!今うんてやりましたよねっ!やったぁ!」
もうこれで帰ってくれると思っていた。
でも彼は後からついてくる。
歩きながら携帯を打って、立ち止まって彼に携帯を見せた。
『なぜ私の後ろを着いて来るのですか?』
「ん?………危ないですからねぇ。僕がボディーガードでっす!」
子供みたいな笑顔で、彼はそう答えた。
『大丈夫ですから、お帰りください。』
また、見せる。
「えぇ!ダメですよぉ。夜も遅いですからぁ。僕たち友達ですからぁ。だから心配なんですよぉ。僕が守りますからねぇ」
ニコッと笑う彼を見て、思わず笑ってしまった。
「あぁ!笑いましたねぇ!かっわいいですねぇ。僕その笑顔好きですよぉ。さぁ行きましょう。嬉しいですから、僕歌いまっす!僕、歌手なんですよぉ」
早口でそう言うと、彼はいきなり歌い出した。
歌手と聞いてまさかと思ったが、ジュンスが歌い出すと納得出来た。
ハスキーで綺麗な声の歌は、周りの空気でさえ煌めいているように思えた。
私はジュンスという人が、分からなくなっていた。
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