―1―

3/5
前へ
/88ページ
次へ
三年前に、ある事がきっかけで声が出せなくなった。 人と接触することも怖い。 医者には精神的なものだから、時間の経過が必要と言われている。 一人アパートに引きこもる日々。 見兼ねた叔父が、リハビリを兼ねて、自分の経営する店で働かないかと声をかけてくれた。 私は叔父の好意に甘えた。 人への恐怖はだいぶ薄らいだが、声は……全く出ない。 自宅を出てバスに乗り、五つ先のバス停で降りる。 そこから店には一分あまりで着いてしまうが、私にはとても長く感じる。 やっとの思いで店に着くと、裏にある出入口から入り、すぐに着替えて髪を束ねる。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加