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おでんの火力を調整していると、不意にバイト君が話しかけてきた。 「○○さん?おでん好きですか?」 店内にお客さんがいないので、明らかに暇という態度で聞いてきた。 私は笑顔で顔を左右に振った。 「そうですか!俺も苦手っすよ。この匂い臭いですよね?」 どうやらバイト君も苦手らしい。 「食べるのはいいんだけどなぁ…」 一人言のようにバイト君が言っていたので、私も彼を見ないで二回頷いた。 「○○ちゃん?ちょっとジュースの扉のガラス、拭いといてくれないかなぁ?手の跡が凄いんだよ」 店長がレジカウンターに入り、私がやっとおでんから解放される。 「いいなぁ……」 おでんの香りを間近で嗅ぎ続ける事になるバイト君が、ボソッと言ったので、私はクスッと笑った。
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