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私はその場を離れて、おつまみのコーナーに戻った。
この人が『例の人』。
このジュンスと呼ばれている人。
いつも夜遅くに買い物に来て、納豆とプリンと何かを買っていく。
そして、必ず私に話しかけてくる。
いい加減口がきけないと気付いても可笑しくないが、彼は……ジュンスは気付かない。
私はおつまみの補充を終えると、店長とバイト君に挨拶をして仕事を終えた。
もうバスはない時間。
深夜一人で歩いて帰る。
暗くて怖いと言う人もいるが、私はこの方が気分が楽だ。
闇は全てを覆い隠してくれる。
私が声を失ったからと、人は私の表情をよく見る。
いつも笑顔じゃないとダメですか?
私は自分の心の闇まで隠してくれる、この闇と静けさが好きなんです。
「待ってぇ!!」
後ろから声が聞こえた。
ハスキーな声。
もしかしたらと振り向いた。
「待ってくっださぁい!!」
私に何か用事があるのか、例の人ジュンスが走ってくる。
はぁはぁと息を切らせて、私に追いついた。
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