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「…お久しぶりですね。大戦で片目を無くされたと聞いていましたがお元気そうで…」
「今の今まで何故帰ってこなかった」
彼は言葉を遮り、苦しそうに目を細めた。
ここに俺はいていいんだろうか。
さすがに気をきかしたのか兵士達は数歩下がった辺りで見て見ぬフリをしている。
「いいのよ。ここにいなさい」
自分の居場所に思い悩んでいるとふわりと後ろから祖母に抱きしめられる。
「あれが強い母と父の本当の姿よ」
そう囁かれ二人の姿を想い見る。
どうか幸せになってほしい、そう願った。
「………現実が怖かったから。予知に翻弄されるなんて魔女としては三流以下なんだろうけど、日々目まぐるしく変わる物の一つ一つが本当にそうなったらって考えると怖かった。だから帰ってこなかったのだけど…」
母はチラッとこちらを見た。
自分の回りには偉そうな連中が沢山いたりする。
「王と母様に嵌められた…」
「…は?」
「来週には正式に発表されると思いますが、私はこの度、王子と王女の教育係と外交長に任命されました」
「はい?」
「つきましては魔女アイリスで外交するわけにはいけませんので、30年くらい使っていなかったアイリス=ローラ=ラミルスの名を使用する手筈になったらしいです」
「らしい?」
「詳しくは私も理解していないので…でも貴方次第で姓は変えられるよう指示がでてるらしいのだけど、どうしましょう?」
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