よわりめのいとしきみへ

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国軍が西の国との戦場へと旅だった。 遠く小さく見えなくなるまで、窓から彼を眺める。 「バカ娘!王から…」 大きな音とともにドアが開く。 「母様」 背筋を伸ばし、母を見つめた。 私を見るなり、母の怒気の様子が一変。 初めて見るほどの愕然とした表情だ。 「あんたって子は…」 過去も未来も見透かしてしまうほどの魔女である彼女には決して嘘をつけない。 「…護り石は石を持つものが生きることを求め諦めないのなら最大の護りになる。けれど」 「生きることを諦め、死を受け入れたのなら、護り石を渡した魔女も命を落とす、でしょ?」 渡した魔女の命もかかる。 一つの禁魔法。 渡した相手がそれを知っては効力を失う。 あくまでも受け取った相手にかかる、魔女にとっての諸刃の剣。 「あんたの魔力は強い。けどまさか禁魔法なんて…」 普通使えない、といいたいのだろう。 魔力の構成法が普通と違う。 手にとるように使える魔法とは違い、大きな魔力を扱うがゆえにある程度修行を積む必要がある。 言外の言葉の意味を読み取り微笑んだ。 確かに普通なら使えない。 特定の条件を除いて。 「…まさかと思ってたのよ」 そのまさかだ。 今私は魔力の干渉をほとんどうけない。 力が、溢れている。 全ては偶然と偶然が重なった産物。 普通の魔女ではきっとこうはいかない。 人並みより強い魔力を秘めているからこそ気付けた。 「母様、お願いがあるの」 本来、為そうと思っていたことをしよう。 あの人のために。  
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