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一年あまりの月日が経ち、争いは終結した。
手に入れた物は『勝者』という称号。
失った物は、少なくない。
「クソババア!」
勢いよくドアを開けると書類を広げ頬杖をつく母の姿があった。
「…帰ってきて第一声がそれかい、クソ息子」
「アイツは!」
「聞いたわよ。殿としてだけでなく機密部隊として終結の決定打を打ったのあんただって?それがその代償ねぇ。凛々しくな…」
「お袋!!」
俺の姿に驚きもせずに涼しい顔をしながら話す母にドロリとした感情が生まれる。
全て知っているんだろう。
「…あの子なら国王付きを辞して他国に留学したけど」
「留学ってなんだよ!どうしてそんなことにな…」
「一人で変えられないなら二人で変えな、って私言わなかった?」
その言葉の指す意味は。
それじゃあ…
「あの子は魔女よ。能力は戦闘に特化してはいるけれど、力が強いせいもあって予知の能力も安定してる」
「何を…」
「…帰参してくる軍隊の中にお前がいなくて泣き崩れる自分の姿を見たんだと」
だからこの国を離れたと、母は言う。
予知での自分の姿とできるだけ異なるよう長い髪を切り、対面を保つ理由づけをして旅だち、数年は帰ることはないと。
例え未来が変わってもお前がいない未来なんて意味がない。
「ハハ…死んだらよかっ…」
言葉を言い終わる前にパチンという指を鳴らす音で俺は後ろに吹き飛んだ。
「あんたは魔女の覚悟を知らないから言えるのよ」
指された指の先にあるものは護り石。
朗々と語る母の前で十数余年ぶりに涙した。
待つから。
ずっとずっと。
お前を。
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