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森の中の荒れた道を馬車で揺られていると舗装された路地へと行き着いた。
直ぐさま空は開け、晴天が広がる。
下る坂道の先に見えるのは遠くからでも壮大な城とその城下街だった。
「母様、もうすぐ国の中心部に着きますよ」
声をかけると母は閉じられていた瞼を開き、大きな黒い瞳で外を眺めた。
「…もう15年、いや16年になりますか」
母はそう呟いた後、目的地へと到着するまで目を細め懐かしそうに景色を楽しんでいた。
ここは母の故郷であり、まだ見ぬ父がいるはずの国だ。
母はかつて最年少で王族付きの魔法師になるほどの天才で、その身を10年近くの月日を国へと捧げたという。
だが、俺を身篭ったのを機に国を離れた。
何故かは語らないが、身重の体であるからこそ行動出来たと母はいう。
魔女は子供を孕むと自分と子を護るために魔力が自らの最高の状態へと変化するそうだ。
俺の存在を慈しみ、愛する人の存在を想うことで今の母がある。
俺はそんな母を護る為に強くなった。
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