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すると急に銀時さんが父の形見に視線を向けながら、話に入ってきた。
「え?知っているんですか?」
「知ってると言うか……見た事はある。」
私は刀を鞘ごと抜き、ギュッと握りしめた。
「――これは……私の父、義和の形見なんです。」
すると記憶を探っていた銀時さんは目を丸くした。
「義和!!?」
「……?……ち、父を知っているんですか……?」
「………ちょ、待てよ……。形見っつー事は……」
「……。」
私は悲しい表情になり、瞼を伏せた。
「……嘘だろ……?あの義和が……」
「……銀時さんは父の……何だったんですか…?」
「昔の――仲間だ。」
私は嬉しかった。
父を知っている人が現れて…とても、とても、嬉しかった。
……するとお登勢さんがタバコを灰皿に置き、グリグリと潰してから、口を開けた。
「そんな暗い顔を止めて、着替えな。着物は貸してやるからさ。」
私は自分の服を掴み、見えやすいように前に伸ばした。
確かに、私の服は男性が着るような動きやすい服だ。
するとお登勢さんはカウンターから出てきた。
「こっちに来な。」
私はお登勢さんについて行った。
――そしてある部屋に入ると、お登勢さんはタンスを探り出した。
……しばらく待っていると黒く、大人らしい着物を手渡された。
「これ……。」
「1人で着れるかい?」
「えっ?……あ。いえ、着物は初めてなので……。」
「……仕方ないねぇ………服を脱ぎな。着せてやるから。」
「は、はい。」
私は服を脱ぎ、着物を着せてもらった。
更にお登勢さんに座るように言われ、座ると、人生初の化粧をしてもらった。
「……こんな感じで、どうだい?」
私は立ち上がり、近くにあった全身鏡の前で立ち止まり、自分の姿を見た。
――これが……私……?
私はあまりにも自分が違い、驚きを隠せなかった。
とりあえず、お登勢さんにお礼を言わなきゃ。
「お登勢さん、ありがとう御座います。着物を貸してくれただけじゃなく、化粧まで……」
「スナックでスッピンは可笑しいからね。」
私はクスッと笑い、もう一度、頭を下げた。
……それにしても、着物って重いし、動きづらいなぁ……。
――そしてお登勢さんは、みんなの所へ戻った。
私は今更、恥ずかしくなり、なかなかみんなの前に顔を出せなかった。
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