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ブルーな気持ちは通学路を歩きながら切り替えておく。
そして気持ちを一新して教室に入ると何故か騒がしい雰囲気になっていた。
すでに仲直りをしたのか、智宏と岸本は雑談に興じていた。
「智ちん、何事だこの騒ぎは?」
今勝手に作ったあだ名に呆れながらも智宏はリアクションをくれる。
「智ちんって……いや、転校生が来るらしいよ。
なんか意外だな、こういう情報は隆志の方がいつも早いのに」
「あー……」
最近は狩りのために訓練したり、妖魔についての知識を集めたりでそれどころではなかったのだ。
「ちょっと家の方で忙しくてな」
自分の席に座り、カバンから教科書とノートを取り出す。
と言っても、授業で使うやつじゃない。
イタリア語で書かれた魔術教本で
【魔術士になるための知識
悪魔・悪霊辞典】
である。
ゾンビに改造されたついでに、俺の頭は色んな国の言葉が理解できるほどクレバーになった。
英語はもちろん、中国語、韓国語、ロシアにドイツ、フランス、果てにはスワヒリ語までわかるのだから便利だよなぁ……
俺が集中しているのを理解したのか、智宏と岸本は遠慮して話しかけてこなくなった。
(ゾンビ、イモータル、フランケン・シュタイン、キョンシー……
生物をベースにした妖魔はほとんどが生前の自我、記憶を持たず、核を潰せば撃退ができる。
戦闘力はあまり高くないが製造は簡易のため中世の時代は多くの魔術士が使役した。
現代では倫理的観点から、免許を持つもの以外に人型のゾンビの製造は厳禁)
「……」
脳裏にゼクラの顔がふっと浮かび上がる。
あんな奴にまともな倫理があるのだろうか?
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