プロローグですが、ナニか?

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それはまるでスローモーションの世界だった。 落ちてくる携帯と、前に進む俺とが接触するまで一秒とも満たない瞬間 ――あと、少し 「と、どけぇぇぇぇぇぇ!!」 あの携帯には―― 今まで密かに貯めてきたムフフなデータが詰まっているんだ!!! そして携帯は俺の手の中へ 確かな感触も右手に感じた。 「おお――」 願いならぬ煩悩が天に届いたのか、俺の手は確かに携帯をキャッチした。 ――――だが、事はそこで終わらなかった。 あまりに勢いをつけていた俺は路地を抜け、抜けた先にあるガードレールの高さを越えたまま車道に飛び出してしまう。 「――――え?」 車の不快感を覚えさせるクラクションがひどく近くに聞こえ、そちらに顔を向けると黒塗りのベンツが俺に迫る。 タイヤを地面に擦り付け、甲高い音も聞こえた。 急ブレーキをかけているようだが、間に合わない。 俺はまだ空中にいて、身動きがとれない。 その瞬間だけ俺は目を閉じた。 体に衝撃が伝わり、再び目を開くと俺は空に浮いていた。 ――あ、死ぬな。 轢かれた痛みは感じなかった。それだけの衝撃だったのだ。 夕暮れで赤黒くなった空を眺めると、さっきのカラスが電線の上から俺を見ていた。 痛みは無いのに、体が落下するのが分かる。 死にたくないと、想う暇も無い。 ただ、肉が潰れる不愉快な音だけが聞こえて、何も感じなく――――――………… 6月22日 18時49分 高橋隆志・死亡
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