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舞を売るものはそろった。
後はお客が舞を「買う」のを待つだけ。
八木は私を待機室へと案内した。
この店は個室待機だ。
土足厳禁、ネットカフェを腐らせたような部屋。
座イスに毛布、テーブルに小さな棚、灰皿、ティッシュ、14インチのアナログテレビ。
そして、カラオケBOXにある電話。
仕事が入るとこの電話が鳴るらしい。
「ゆっくり好きなことしてていいからな」
八木はそう言って扉を閉めた。
私はテレビをつけるでもなく、携帯をいじるわけでもなく、何をするでもなく……ただ全部終わればいいと思った。
何が全部なのかわからないけど、舞に生まれ変わったつもりでも、
私は間違いなく紺野裕子だった…。
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