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部屋中いっぱいに私の声がわんわんはね返る。
「……。」
何も起こらない……。
やはり記憶の創造にすぎなかった。
いきなり叫んだから悪魔は驚いたのだろうか。
とっさに耳の穴がありそうな部位を必死に両手でおさえていた。
にやり。
予想外のことが生じたが形勢逆転ってところなのだろう。
耳から地面へと両手が移動した。
目つきが更に鋭く、光る。
相変わらず私の背筋は、凍ったように動かなかった。
どんどん顔が強ばる。
美術館のブロンズ像の気持ちがすごく分かったような気がした。
ライオンに追かけられるシマウマの気持ちも痛いほど分かった。
私を睨みつけ、短く黒い毛が逆立った。
冷汗が半端ない。
動け、動いて!
私の体!
そんな願いもむなしいのもだった。
悪魔は体の比に合わない巨大な口を
一杯にひろげながら
獲物目がけてミサイルのごとく襲いかかった。
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