~導入~

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家に帰ってもいつものように誰もいないだろう。 暇潰しにどこか行こうとしても この辺は全くといっていいほど、何もない。 首都圏の一歩外れたこの住宅街を恨む。 しぶしぶまっすぐ家に帰ることにした。 微妙に狭い一本道の 黒く舗装されたコンクリートを見ながら早足で歩く。 角を曲がると 近所のおば様達が耳障りな笑い声を上げながら井戸端会議。 まずい……。 目を合わせたらまた話のネタにされる。 こんな日常がとても嫌だった。 小さい頃は何も無いところでもキラキラ輝いていた気がする。 鳥達の可愛らしい小さなさえずり。 時々しか通らないトラックの音。 近くの公園で遊んでいる友だちの笑い声。 そして、なによりも……── いや、気のせいだ。 ガキンチョなんて、物事を表面上しかとらえることのできない 可哀想で未発達な人間だから。
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