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まずは母の部屋から。
基本的にひとりで入るなと言われている。
母の部屋のドアノブを握って入ろうとするのを見られたら
顔を青ざめて私の元へ駆け寄って一括する。
「勝手に入ってはだめ。」
そこまでして
隠したいものがあるのだろうか。
だったら部屋に置かなければ良いと思う。
大人ってものは理不尽だ。
ためいきをつきながら母の部屋のドアノブを握った。
──最後に入ったのは
小学校5年の蝉が忙しく鳴く時期だった。
とても怖い思いをしたのか、ひどく泣きじゃくっていた。
母は珍しく私の頭を撫でていた。
ドアを開けたら
ほのかに柑橘系のにおいが鼻から抜けていく。
このにおいは、懐かしいような
でも、ちょっぴり悲しい気持ちになる。
たしか……
目の前に大きな木製の本棚があったような……。
年期が入っていたような気がする。
見た事の無い文字で書かれた背表紙を纏ったものが
整列していた──
あれ……?
その後、何が起こった?
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