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邪悪な光をまとったそいつは
サナギから出てきたちょうちょのように
ゆっくりと私との境界線から完全に離れた。
翼を広げこの空間を風のように駆け回る。
ようやく低空飛行をしたかと思えば机の山に音もなく着地した。
悪魔が私をじっとりと見つめる。
「キキキッ」
口をにいっと開いて笑っていた。
私だけではなく人の心をかきむしるくらいの
嫌な響きを持っていただろう。
気持ち悪い。
小さな手の平だと思われるところには
見たことのない一口サイズ木の実が握られている。
金色だけど、よく見てみたら薄く黒がかっていた。
ところどころ歯跡がついていたけど。
「ガリッ。」
感じたのはさらなる憎悪、恐怖。
そして、無機質な感情。
もうどうだっていい。
全部……壊れてしまえば良い。
きっとこの現象は
あいつがおやつを食べたからだったからだということは
また後日知る事になるだろう。
虚無感がむりやりねじれ込んで来る中
『あれ』が記憶から浮き出てきた。
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