救世主。

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俺以外の他の家族は――まだ引越しの準備中。 家族は荷物が多く、準備に時間がかかる。なので、俺は一足先に引越し先の環境を確認する為にも新たな我が家のある街を見に来た――訳なのだが。 ドンッ 「あ、スイマセン…」 今日の晩飯の買い物に近くの商店街(コンビニが見当たらなかったので)に来ている。 そこまでは良かったんだ。 ただ、俺と同じく晩飯の買い物に来ているらしいおばちゃん達の一人ではなく、非常に厄介な人とぶつかってしまった。 「あぁん?俺にぶつかるとは良い度胸してんじゃねェか」 「へっ、ヤられてェのか、コラ」 正格には()だった。 「え、えぇと、あの…」 上手く言葉が浮かんで来ない。 もう陽は沈んでいたが、商店街には開いている店の方が多い。 だが、誰一人として俺を助けようとしてくれる人は居なかった。 (あ~、この街は薄情な人しか居ないのかなぁ) 危険のサイレンを鳴らしている頭の隅で、そんな事を考えていたら、 「オイ、無視とはホント、良い度胸じゃねェか」 どうやら相手の感にさわってしまったらしい。 「む、無視なんかしてませんっ」 「まぁ、お前みたいな奴が俺に楯突ける訳ねェよな」 ハッハッハッ、と彼らは大口を開けて笑う。 (誰だ、俺のピンチを更に酷くした奴) ※自分自身です。 「でしょう?って事で、俺帰って良いですか?」 機嫌が良くなった内に、と言ったその一言が、再び墓穴を掘ってしまったらしかった。 「ハッ、駄目に決まってんだろ、んなモン」 ついに、襟首を掴まれて引き寄せられた。 「ゴメンで済んだらケーサツなんか要らねェだろ?」 そう言って、彼は開いた手を目の前に突き出してきた。 5、5、5…………5千!? 「えっと、5千円なんて俺持ってませんけど…」 「バカ野郎、5千じゃねェよ」 (ほっ) 「5万だ、5・万」 お金じゃないのだと思って溜め息を吐こうとしたと同時に、衝撃の一言がのし掛かってきた。 「5、5万!?」 「払えねェなら、落とし前はしっかり付けて貰わねェと…、なぁっ」 握り締めた拳を、容赦なく彼は俺へと振るう。 俺は思わず目をギュッと瞑った。 .
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