はじまり…かな?

12/13
前へ
/13ページ
次へ
以前に付き合ってた子達にだって、最後までそんなこと言えなかった… ま、言いたくなるようなくらい、俺が相手を想う努力すらしなかったのも悪いんだろうけど。 気がつけば学校のすぐ近くまで来ていた。 「先輩!」 突然、横から声がして顔を上げてそっちを見た。 「おはようございます」 礼儀正しく頭を下げて挨拶をした彼を見て、俺は『あっ』っと声をあげた。 「…昨日はどうも」 「い、いやあ、こっちこそ邪魔しちゃって。悪かったなぁ…なんて思ってた訳で」 (ひぃ~!何で音楽室で出会った“誰か”が、わざわざ声かけてくるんだよぅ) 「先輩…昨日コレ落としませんでしたか?先輩が去ったあと、立ってたあたりで見つけたんです」 彼は、ポケットからハンカチを取り出すと、開いて中を見せてくれた。 「ああ、良かったぁ。拾ってくれてたんだ」 そこには、これから探しに行くつもりだったストラップが入っていた。 「やはり…先輩のでしたか。はい、コレお返しします」 そうっと優しくハンカチから取り出して、俺の手の中に入れてくれた。 「ありがとう!ありがとう!助かったぁ」 俺は心底嬉しかった。おそらく安堵と喜びいっぱいで満面の笑みだったと思う。 「……俺…1年4組の成瀬 昴(なるせ すばる)って言います」 「あ、えっと、俺は2年4組の東雲蒼真。でコイツが篠原海司」 「どぉうもっ」 手をヒラヒラさせて軽快に挨拶する海司に、成瀬君は丁寧に頭を下げた。 「あの…良かったら放課後…また来て下さい」 そう言って、成瀬君はまたぺこりと頭を下げて、スタスタと学校の方に歩いて行った。 「蒼真、めっちゃくちゃ美人な1年生くんだけど、誰?」 「成瀬昴君…らしい」 「いや、どう言う知り合いかなあって?おまえのストラップ持ってたし」 「あんら~、あらら?海司君。ヤキモチですかぁ?ムフフ、気になる?ねえ…気になる?」 俺はさっきまでのお返しとばかりに、悪戯っぽく口を押さえてニヤニヤとしながら言ってみた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

281人が本棚に入れています
本棚に追加