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以前に付き合ってた子達にだって、最後までそんなこと言えなかった…
ま、言いたくなるようなくらい、俺が相手を想う努力すらしなかったのも悪いんだろうけど。
気がつけば学校のすぐ近くまで来ていた。
「先輩!」
突然、横から声がして顔を上げてそっちを見た。
「おはようございます」
礼儀正しく頭を下げて挨拶をした彼を見て、俺は『あっ』っと声をあげた。
「…昨日はどうも」
「い、いやあ、こっちこそ邪魔しちゃって。悪かったなぁ…なんて思ってた訳で」
(ひぃ~!何で音楽室で出会った“誰か”が、わざわざ声かけてくるんだよぅ)
「先輩…昨日コレ落としませんでしたか?先輩が去ったあと、立ってたあたりで見つけたんです」
彼は、ポケットからハンカチを取り出すと、開いて中を見せてくれた。
「ああ、良かったぁ。拾ってくれてたんだ」
そこには、これから探しに行くつもりだったストラップが入っていた。
「やはり…先輩のでしたか。はい、コレお返しします」
そうっと優しくハンカチから取り出して、俺の手の中に入れてくれた。
「ありがとう!ありがとう!助かったぁ」
俺は心底嬉しかった。おそらく安堵と喜びいっぱいで満面の笑みだったと思う。
「……俺…1年4組の成瀬 昴(なるせ すばる)って言います」
「あ、えっと、俺は2年4組の東雲蒼真。でコイツが篠原海司」
「どぉうもっ」
手をヒラヒラさせて軽快に挨拶する海司に、成瀬君は丁寧に頭を下げた。
「あの…良かったら放課後…また来て下さい」
そう言って、成瀬君はまたぺこりと頭を下げて、スタスタと学校の方に歩いて行った。
「蒼真、めっちゃくちゃ美人な1年生くんだけど、誰?」
「成瀬昴君…らしい」
「いや、どう言う知り合いかなあって?おまえのストラップ持ってたし」
「あんら~、あらら?海司君。ヤキモチですかぁ?ムフフ、気になる?ねえ…気になる?」
俺はさっきまでのお返しとばかりに、悪戯っぽく口を押さえてニヤニヤとしながら言ってみた。
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