第二章 不運と踊れ-Back in Black-

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「ッ!おいッ!!何つっ立ってんだッ!!早く奥に隠れろッ!!」 フィルスが叫ぶ。しかしダニエルは動こうとしない。死を受けいれているかのようだ。誰に言うでも無く、ダニエルがつぶやく。 「どうせ死にかけの組織だ。未練は無い。ちょっとだけ、君たちみたいに好き勝手できる力が欲しかったのさ。余生を楽に過ごすためにね。いつかこうなる事も、わかっていた。だから、もういいんだ。」 「何を言ってるんです?アンタが死んだら誰が裏帳簿を盗んだ犯人だって証明するんですか?『守りますよ』、そっちの方が得意分野だ。」 モアは自らの一部をコートのように変化させ、ダニエルの体に纏わせる。 「弾丸程度なら通しません、逃げましょう。」 「おい!来やがったぞ!」 ヘリは空中で静止し、ドアが空いた。全身をライダースーツで包んだ女が身を乗り出した。髪の毛は、栗色。歳は30手前ぐらいで、長髪が風になびいている。 「私たちの関係もこれまでのようだな。ダニエル。」 冷たく突き放すような話し方だ。養豚場の豚を見るような目で、ダニエルを見据えている。 「来たね。アヴェンジー。哀れな女よ。」 「あなたには失望した。ずいぶんと軽い口だったな。」 「悪いね。年をとるとどうにもおしゃべりが好きになる。」 「でも、もういいわ。あなたは死ぬの。そこの『化け物たちと一緒に』ね。」 女は取り出した円筒状のそれを肩に担いだ。ミサイルだ。そして放たれる。白煙をまき散らして、三人に迫ってきた。 「おいおいマジかよッ!!」 フィルスは足の鉄球を最大回転させる。モアはダニエルを抱えると、フィルスに掴まった。フィルスはモアを引っ張りながらグングン加速し、爆発の圏内から逃れて行く。背後で爆発が起きる。三人は撒き上がった土を被りながら、なんとか逃げ仰せた。爆煙でヘリの視界が一瞬覆われたのも幸運だった。 アヴェンジーは激しく舌打ちをすると、ヘリの操縦しに指示を出した。ヘリは青空へと消えて行った。
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