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崩れ落ちる一方、ルーナ。
抱き止めるもう一方、サン。
ルーナの胸部からは、止めどなく赤黒い血が流れ、瞬く間に二人の足元には血溜まりが出来上がる。
『サ……ン……ぐっ』
『いい!!喋るなルーナ!!直ぐに治療するから!!』
ルーナの胸部に翳したサンの手から淡いクリーム色の柔らかい光が溢れる。
ゆっくり剣を抜き傷を確認するが、傷は塞がることなく出血量が増すばかり。
『サン……生き……ろ』
『嫌だ!!そんなこと言うな!!』
『これ……は……げふっ……起こる……べくして……起こった……げふっごほっ……ことだ……』
血を更に吐くルーナ。それでもルーナは朦朧とする中、目を瞑らない様に意識し、サンから視線を外すことはない。
『なぜ!!どうして!?あの時……あの時お前には……私の剣を弾いて返り討ちにすること位雑作(ゾウサ)もなかった筈だ!!』
『買い被り……過ぎだ……』
『違う!!お前は何もしなかった!!何もだぞ!?自ら刺されに来たではないか!!……どうして……どうしてそんなことを……ッ!!』
『最愛……の君……に……殺される……なら……本望……さ』
徐々に冷たくなり始めているルーナの体。その体温の変化は確実にサンに伝わり恐怖を与える。
『クソックソッ!!なぜだ!!なぜ……傷口が塞がらない……ッ……ルーナ……目を瞑るな……頼むから……死なないでくれ……』
完全に閉じた目。それでもルーナは僅かに意識を残しており、サンに最後の言葉を告げる。
『サン……』
『な、なんだ!?』
『化物と……蔑まれた……僕を……愛して……くれて……ありがとう……』
『ッ……私を……愛してくれて……ッ……あり……ッ……がどう』
『もし……来世……で……再び……巡り……会えたら……また……恋人と……して……』
『あぁっ……!!もぢ、ろんだ!!』
『良かっ……た……約束……だ』
『あぁっ……あぁっ……!!』
『ま……た……』
その言葉を最後に力が抜けたルーナの体。
『ッ……ルーナ……ルーナ……ああ゛あ゛ぁぁぁぁあああ!!』
部屋に響くサンの悲痛な鳴き声。ルーナの亡骸を抱き締め必死に呼びかける。無意味だと誰よりも理解しているのに。
二人の元に駆け付けた男性。部屋に入った途端に力が抜けたように地に膝を着く。その男性が見たものは……部屋の中心で抱き締め合う二人の亡骸だった……。
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