―始まり―

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     気付いたら、俺はたくさんの屍と血で出来た水溜まりの中心に立っていた。  直ぐに画面が変わる。そこは見覚えがある風景だった。  忌々しい過去だ。  両サイドに広がるのは四階建ての校舎。二階には渡り廊下があり、校舎を繋げている。ここは学校の中庭だ。  上ばかり見ていた視線を正面に向ける。  そこには笑い合う男女と、その間に挟まれるように幼い双子の兄妹がいた。その背にはランドセルが背負われている。  兄妹は笑顔で仲良く手を繋いでいた。  それぞれに視線を向ける。父さん……母さん……そして……。 「森羅(シンラ)……」  それは妹の名前。  もうこの世にはいないであろう妹の名前を呟く。  そろそろか。  この忌々しい記憶がいつも終わるのは……。 『銀(ギン)おにぃちゃん!!』 『何ぃ森羅』 『おんなじクラスでよかったね!!』 『そうだね!』  丁度この会話をしていた時だ。奴が現れたのは。  ズドンッ!!  俺たちの前に降ってきた奴は、三メートルある身長に、黒い体毛に覆われた体。額から生える二本の角に赤い一つ目。鋭く尖った長い爪。  一目で分かる。  コイツは危険だと。  俺は唐突に腕で目を覆う。同時に光る映像。  あぁ……やっと悪夢が終わる、と一安心する俺。  
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