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―12:42 メイドクラブ
警察が制圧したことで店内はようやく落ち着いた様相になった。
乱闘の痕跡が生々しく残ってる。
「スゴいですね…」
「ガサ入れなんてこんなものだ」
「狭山刑事!」
「な~に?」
「メイドクラブの店員3名を保護したのですがいかがしますか?」
「こっちに連れてきて」
「はい!」
「メイドクラブの店員ってことは…メイドさんのことだよね?」
「そうね。わたしも何度か見てるけど…ここの制服カワイイのよ」
「…メイドクラブは売春の斡旋も行っていた疑いがあるから…
場合によっては彼女たちを連れて行かなければならないだろうな」
岩渕篤郎はそうとう悪どいことを手広くやっていたみたいだな。
「連れてきました」
「――!?」
そこでおれたちの目に映ったのは信じられない光景だった。
「も、桃子…?!」
「さくら…っ」
さくらさんの親友の桃子さんが…メイドクラブの服を着ている。
「ここで働いてたの…?」
「時給がよかったから…」
桃子さんは小刻みに震えている。
だいぶ、怖い思いをしたんだな。
「柳ちゃん、彼女たちを保護して向こうで事情聴取をお願い」
「はい。分かりました」
彼女たちがこの店のメイドとして売春をしていたとしたら…
それは岩渕篤郎のせいだろう。
「ところで…問題の岩渕はどこにいるのか教えてもらえるかな~」
「あっ、えっと…その…」
「なに?まさか…逃げられたとか言うわけじゃないよね~?」
狭山さんの笑顔が怖く見える。
「い、いえっ!岩渕は発見したのですが…すでに死亡していて…」
「死亡…?死んでたの?!」
おれたちは言葉を失った。
―――――――――――――――
メイドクラブを飛び出した英樹は息を切らせてタクシーに乗った。
「この…お金さえあれば…」
タクシーから降りた英樹は千春の病室へ向かい部屋に入った。
「千春…」
「お兄ちゃん!今日は早いね」
「ちょっとね…」
英樹は倒れ込むようにイスに座り千春の頭を優しく撫でた。
「お兄ちゃん…?」
「千春…お兄ちゃんが必ず千春を元気な姿に治してやるからね…
千春は何も心配しなくていいよ」
「お兄ちゃん…」
自分は間違ったことをしていると分かっていながらもここまで来てしまったら後には退けない。
このまま進むしかないのだろう。
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