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岩渕さんは心臓を刺された時に…とっさに将棋の駒を握った。
それには何か意味があるはずだ。
「大きな金庫ですね」
「ここに売上金や重要書類などをまとめて保管していたようだ」
「山崎警視」
「何か分かったか」
「どうやら借用書や土地の権利証などが無くなってるそうです」
「借用書は分かりますけどなんで土地の権利証なんて金庫に…」
「担保の代わりだよ。貸した金を返さないと土地の権利証をヤクザなんかに売り渡したりするのさ」
「よく知ってますね」
なるほど…権利証を押さえられてしまえば払わざるを得ないな。
「持ち去られた借用書の持ち主を特定することは出来たの?」
「はい。実はこちらに来て頂いてまして…あちらにお待ちです」
「……会ってみるか」
岩渕さんからお金を借りていたという人たちに会ってみよう。
現場に現れたのは2人…バーテン服を着た若いイケメン男性と…
弁護士バッジを身に付けた男性…この2人が借金をしていたのか。
「えっと…こちらのバーテン服を着ている男性が赤羽隆介さん…
そして、こちらのスーツの男性が金沢庸治さん…弁護士です。
それでは簡単に自己紹介をお願いします。それと事件当時になにをしていたかも話してください…」
まずはバーテン服のイケメンか。
「赤羽隆介です。メイドクラブの隣でバーを経営しています。
事件当時はまだ開店前だったので一人でカクテルを作ってました」
「一人でということはアリバイを証明する人はいないんですね?」
「はい。従業員もまだ来ていない時だったので…外が騒がしくて、気になって出てみたら…
こんな騒ぎになっていました…」
「なるほど…」
次は弁護士の先生か。
「金沢庸治です。メイドクラブの2階に事務所を構えています。
事件当時は…溜っていた領収書の整理や経費の計上をしてました」
「お一人で…ですか?」
「うちは事務を雇っていないので私が事務を担当してるんです。
一人で作業をしていたら騒がしくなって来たので外に出ました…」
「なるほど…」
2人ともアリバイはなし…か。
一人でいたなら証明できないな。
「ちなみに…どうしてお2人は、借金をしていたんですか?」
それに…岩渕さんにお金を借りていた2人が彼の店の近くに自分の店や事務所を構えたのは何故か。
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