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またしても金沢さんの名前…
顧客名簿にも金沢さんの名前が…つまり彼はこの店の常連…
事件当時も店に来ていたのか。
でも、確か彼は上の階の事務所にいたと言っていたはず…
ということは…あれは嘘なのか。
「……君は本当に事件当時に金沢庸治の相手をしていたのだな?」
「…は、はい…金沢さんは大事な…大事なご主人様ですから…」
あゆみさんは伏し目がちに答えて手首を隠すように袖を伸ばした。
その様子を御門さんは見ていた。
「……そうか」
何か気づいたことがあるのかな。
「それにしても…この店には敷地面積のわりに部屋が多くあるな」
「そ、そうですか…?」
「部屋の数が多い為に惑わされていたが…空いている部屋がある」
「――!?」
あゆみさんたちの顔色が変わり、明らかに動揺している様子…
御門さんは白い壁を軽く叩いた。
「なっ、なにを――」
「もしや…このメイドクラブには隠し部屋があるのではないか」
「――隠し部屋!?」
「恐らく…常連の為に用意された特別な部屋がある筈だ。
例えば、この壁の向こうとか…」
「なるほど…ねぇ」
狭山さんは納得した様子で頷き、鑑識からハンマーを借りた。
「この壁を壊すんですね~?」
「や、やめてー!」
悲鳴にも似た声が響き、その場に泣き崩れたのはあゆみさん。
「……あなたの言う通り…メイドクラブには隠し部屋があるわ」
「そんな…知らなかった」
「……ムリもないわ。隠し部屋の存在を知っているのはごく一部のご主人様とメイドだけだもの…」
「どうして隠し部屋なんて…」
「そもそも隠し部屋で何を…」
「このメイドクラブには風営法に違反している疑いがあった。
その為に警視庁の刑事が何日にも及ぶ張り込みを続けていた。
会員制で常連客には特別な特典があり一見の客には普通のサービス…しかし、常連客を捕まえて話を聞いて隠し部屋の存在を知り…
そこで何が行われていたのかも…合法的な手段で聞き出してみた」
(脅したんだな)
(脅したんだね)
「……メイドと2人きりで大人の遊びを行う為の部屋だったのだ」
「大人の遊び…?」
「それって、つまり…」
「このメイドクラブはメイド喫茶などではなかったという事だ」
「……その通りです」
メイドクラブの実態…それは…
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